川口哲也税理士事務所

年収の壁

年収の壁

本日は「年収の壁」について解説したいと思います。

年収の壁とは、税金や社会保険料が発生する境界線を指します。一定以上の収入を超えると住民税や所得税は非課税にならず社会保険も扶養に入ることができずに自己負担となります。そのため、パートタイマーで働く一部の人は「年収の壁」を意識した働き方をしており、働きすぎないように調整しています。先日、各都道府県における最低賃金の引き上げ額が確定したというニュースを見ました。2025年10月~12月の間で最低賃金が引き上げられることとなります。賃金の上昇はうれしい反面、すぐに年収の壁に到達してしまうということでさらに働き控えを助長する一面もあるように思います。しかし、2025年は「年収の壁」も引き上げられましたのでその影響も少しは緩和されるのではないでしょうか。それでは本日のメインテーマ「年収の壁」についてみていきましょう。

税金に関する壁

①100万円の壁
年間の給与収入が100万円以上になると、住民税の課税対象となります。住民税については自治体によって微妙に金額が異なるためおよそ100万円とおぼえておきましょう。
②103万円の壁→160万円(123万円)の壁
年間の給与収入(額面)が103万円(160万円)以上になると所得税の課税対象となります。改正前では給与所得控除額55万円と基礎控除48万円の合計103万円でした。これが2025年の改正によって給与所得控除額は65万円(10万円増)、基礎控除58万円(10万円増)となり合計123万円が課税の最低ラインとなりましたが、年収200万円以下の人については、基礎控除がさらに37万円上乗せとなり、95万円の控除が可能となります。したがって給与所得控除額65万円と基礎控除95万円の合計160万円が壁となります。今回の改正では給与収入が200万円~850万円以下の人についても令和7年、令和8年の2年間に限って基礎控除の追加の上乗せが段階的に用意されております。しかし令和9年以後は基礎控除は一律58万円となります。

社会保険に関する壁

③106万円の壁
年間の給与収入が106万円以上になるとある一定の要件を満たすと社会保険への加入が義務付けられます。具体的なその要件とは、①週の所定労働時間が20時間以上、②月額賃金が88,000円以上、③学生ではない、④従業員51人以上の企業で働いているというものになり、これらの要件をすべて満たすと加入が義務付けられます。現在、106万円の壁については、最低賃金の引き上げも行われ週20時間の労働で106万円を超える水準となり、加入義務が発生する人が増加することから2026年の春ごろには撤廃への動きが活発になっています。そのため今後は「20時間の壁」を意識した働き方となるのではないでしょうか。
④130万円の壁
年間の給与収入が130万円以上になると社会保険の加入が義務付けられることとなり、扶養に入ることができなくなります。結果、社会保険料の負担が増え、収入が増えても手取りが減るということが起こり得ます。しかし、130万円を少し超えてしまった場合や、繁忙期をすこし多めに手伝ったことによって超えてしまった場合に事業主が証明した場合に扶養から外れることなくそのまま扶養認定が可能となります。しかし最終的に保険者が認定してくれない場合には社会保険の加入をすることになります。

まとめ
「年収の壁」は多くの人が気にしている内容だと思います。2025年度の改正では「年収の壁」引き上げについて重点が置かれ改正が行われたように思います。しかしボリュームゾーンである年収200万円~850万円程度のサラリーマンの節税がもう少し行われるとより節税の恩恵を受けられる方が増えるのではないかと思われます。ただ、今でも複雑になりすぎた「年収の壁」これ以上は複雑にしないでほしいと願うばかりです。 その他、気になることがございましたらお気軽にご相談ください。